『ソニカの人』第2話|納車された日から、“相棒”になるまで

納車された日から、“相棒”になるまで_アイキャッチ カーライフ物語

この記事は以下のストーリーの続きです。
このストーリーの第1話以外から来られた方は、ぜひこちらのストーリーも併せてお楽しみください。


――ソニカと僕の距離感

Scene 1|納車の翌日、ちょっと戸惑った

ソニカを迎え入れた翌日。
興奮も落ち着き、冷静にソニカと向き合う。

納車の翌朝、目覚めてすぐにカーテンを開けた。
視線の先、マンションの駐車場の端に、それは静かに佇んでいた。

「……おお、いるな」
小さく声が漏れる。妙に気恥ずかしい。

念願のマイカー。
自分だけの車。
昨日までは存在しなかったこの相棒が、今、目の前にいる。
なのに、なぜか心の中は浮かれるというより、少し戸惑っていた。

「なんか……不思議な感じだな」
15年ぶりに手にした“車のある生活”。
以前のようにスッとハンドルを握って走り出せると思っていたけれど、
いざ目の前にすると、どう動き出していいか分からないような感覚だった。

考えてみれば当然だ。
まだ車庫証明すら自分で取りに行ったことがなく、
任意保険は入ったけれど内容が正しいかも自信がない。
必要最低限の用品はそろっているけど、
スマホホルダーもドライブレコーダーも何も付けていない。

「これから、この子と暮らしていくんだな」

そう思った瞬間、ようやく実感がじわじわと湧いてきた。

Scene 2|最初の給油、最初のドライブ

ガソリンの入れ方もどこかぎこちない。これから慣れていこう。

まずは慣れなければと、軽く走りに行くことにした。
エンジンをかけ、アクセルを踏む。
ターボ付きとは思えない静かな走り出し。

とはいえ、久々のマイカー。
ハンドルの重さ、ブレーキの感覚、車幅感覚――
最初の数分は緊張の連続だった。

まず向かったのは、近くのセルフガソリンスタンド。
給油なんて当たり前の行為だったはずなのに、
久しぶりすぎて一つひとつが新鮮だった。

「給油口、左だよな……あ、開け方どうするんだっけ?」

そんな初歩的なことで立ち止まる自分に、思わず苦笑い。
後続の車がいなかったのが幸いだった。

レバーを引き、キャップを外し、ノズルを差し込む。
給油中、ふとあたりを見渡すと、他のドライバーが何気なく車を扱っている。

「自分も、その一員になったんだな」

その瞬間、妙な誇らしさと安心感が混ざった感情が湧いてきた。
給油を終え、気の向くままに郊外の広い道を流す。
音楽もかけず、窓も閉めたまま、ただ車の鼓動を感じながら走る。

「やっぱり車っていいな」

そう思った時、ようやく“買ってよかった”という気持ちが胸に落ちた。

Scene 3|そして、最初の“困りごと”

最初のトラブル。ナンバー灯が切れたから直そう。

だが、そんな穏やかな時間は長くは続かなかった。
その日の夕方、洗車しようとリアに回ったとき、気づいた。

「……あれ、ナンバー灯、ついてない?」

小さなことだった。電球が切れているだけ。
だが、なんとなく焦った。

「もう壊れたのか? それとも買ったときから?」

冷静に考えれば、電球なんて消耗品だし、
ナンバー灯は特に気づきにくい箇所だ。
たまたま納車直後に切れたというだけかもしれない。

すぐに気づいてよかった。
でも不安もあった。
安い車はこういうところからボロが出る、なんて言葉が頭をよぎる。

それでも、【ネットで交換方法を調べて、自分でやってみることにした。
ドライバー片手にリアバンパー下にしゃがみ込み、ネジを回す。
電球を取り出し、替えを差し込み、点灯確認。

「……お、点いた!」

たったこれだけの作業だったのに、達成感があった。
ほんの小さな“トラブル”が、“信頼”に変わるきっかけになった気がした。

「大丈夫。これくらいなら、自分でなんとかできる」

そう思えたことで、距離が一歩縮まったような気がした。

Scene 4|“自分仕様”への第一歩

ソニカの使い勝手を良くするためアクセサリーを探している。

その週末、カー用品店へ足を運んだ。
カゴを片手に店内を歩きながら、
スマホホルダーやドリンクホルダー、滑り止めマットを眺める。

「これがあれば便利そうだな」
「いや、これはちょっと安っぽいかも」
「100均にもあったか……でもこれはこっちの方が丈夫そう」

車の中に“自分の空間”を作っていく作業は、思いのほか楽しい。
買い物だけでなく、帰ってからの取り付け作業にも夢中になった。

取り付けたスマホホルダーが少し傾いていたら、
「もっといい位置はないか」と試行錯誤。
細かな微調整を繰り返して、自分好みに仕上げていく。

「これでだいぶ使いやすくなったな」

車が「所有物」から「居場所」へ変わっていくような、そんな感覚だった。

Scene 5|名前をつけようか、と思った

だんだん愛着が湧いてきて洗車も楽しくなってきた。

ある晴れた日の午後、洗車をしていたときのこと。
バケツの水をかけ、シャンプーで泡立てて、丁寧にボディを撫でていく。
小さな傷も、納車のときには気づかなかった凹みも、
不思議と愛しく思える。

「この子、なんか名前つけたくなるな……」

思わずつぶやいた。
もちろん、名前なんてつけなくても車は車。
だけど、今はもう“道具”というより、“相棒”という気がしていた。

ソニカ。
その名の響きが、以前よりずっと身近に感じられる。

まとめ|車は「買って終わり」じゃない

納車されたその日から、
この車と少しずつ向き合いながら、距離を縮めてきた。

戸惑いながら、試しながら、手を加えながら――
ようやく「これは、自分の車だ」と思えるようになった。

不思議なもので、何かと手がかかるほど、愛着も湧いてくる。
最初はただの「移動手段」だったものが、
今では「日常を共にする仲間」になりつつある。

買った瞬間ではなく、
“少しずつ関係を築いていくこと”が、
車との「お気楽カーライフ」の本当の始まりなのかもしれない。


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